菊作り講座 topへ戻る


大菊とは、花の直径が18センチ(6寸)以上の菊を言います。
大別すると、厚物 厚走り管物(太管、細管、針間)、一文字、美濃菊、大掴みに分けられています。


 
菊は日本を代表する花です。いろんな種類がありますが、大菊だけは、開花した状態で、お店には置いてありません。
 約半年かけて作り上げるテマ暇がたっぷりかかるからです。ですから、値段も付けられません。各人、丹精こめた作品を品評会に出して、競い合っています。
 ここでは品評会に出すという以前の基礎的つくり方を体験的にご披露させていただきます。
──── 秀山(サラリーマン)

講座1
第一講
4月
 冬を越した菊鉢からは春とともに冬至芽が大きく育ってきています。 これは昨年 開花した菊の名残りで、このままでもやがて開花しますが、 今年の大菊には適しません。 そこで、4月中旬から5月初旬に上から5cm位のところで、もぎ取 って挿し芽をします。挿し芽は約3週間で発根しますので、それまで日陰において水やりを絶やさないよう管理していきます。
 挿し芽用の菊は先端から5cm位でもぎとって、30分くらい水につけておいてから発根剤をつけて土に挿します。 これで90%は発根します。
 もっとも、 素人だと、そうですねぇ、80%くらいかなぁ。 このへんは大したことはありません。 発根した苗菊でも、根腐れ、水やりの失敗、アブラムシなどの せいで100%育つわけではありません。でも、ほとんど、とりあえずは生長しますよ。上の写真は、挿し芽の状態です。



講座2
第2講
 4月下旬から5月上旬に挿し芽した苗も3週間たつと発根し始めます。
 この時期は朝と夕方に陽に当てるようにして管理します。まだ、生まれたての菊苗ですので、肥料はいっさい与えません。

  さて、発根した苗から小鉢(ポットで10cmくらいの大きさ)に移して定植させていきます。 土は腐葉土と赤玉が中心です。3対7くらいですが、腐葉土を多くする人も います。適当に混ぜ合わせます。移し替えたら、たっぷりと水やりをして落ち着かせ、これまでとは異なり日当たりのよいところで管理していきます。3日目くらいになってから、初めて水性の肥料をくれてやります。
  この時期は根がしっかりと育つように窒素、カリが多い方がいいでしょう。 ハイポネックスでも十分です。 約10cmから15cmくらいに成長していくまで、これで管理していきます。小鉢から大鉢に定植する前に、テマをかけて中鉢に移動するのもベターとされていますが、なかなか大変です。



講座3
第3講の1 第3講の2
  さて、5月下旬から6月になると小鉢(ポットで10cmくらいの大きさ)に移した菊苗も10cm以上に生長してきます。そこで10cmから15cmの丈の間で、先端の芽を欠きます。先端をしっかり欠き取ってしまうわけですから、残酷です。そのうち、菊は先端から3つに分かれて大きくなっていきます。この時が、実は一番心配です。うまく3つに、つまり3本仕立てにするために同じように生長させていかねばならないからです。 一週間くらいで、大体成功だったかどうかわかります。 深く芽欠きをすると枝の間隔が開いてしまい、デコボコした3本になってしまいます。ここで中鉢に仮定植する方法もベターですが、勤め人にはテマがかかりますから、省略してもかまいません。

  福助、ダルマづくりは、3本にならなかった失敗菊を先端から7cmくらい でもぎとって、8月までにもう一度挿し芽をします。生長を止めるBナインを使い、 30cmくらいの1本仕立てにする大菊づくりです。

  7月になると、いよいよ大鉢への移植が始まります。 定植時の土には、化成肥料と稲の籾殻を焼いた燻炭(くんたん)、それに油粕を混ぜ合わせます。定植時にできたら、上に掲げた左の写真のように鉢の中に管を入れて、わざとスペースをとり 将来の増し土、追肥に備えるのも一法です。

第3講の3 第3講の4
  上の写真のように、3本にうまく分かれていくよう、針金などの器具を使って誘引していくのも大切な作業です。ポッキと追ってしまわないように誘引するには、水やりをカットして、しおれた状態でやることが鉄則です。しおれたときは、自由にこちらの意志のとおり曲がってくれます。素直なものですよ。万一、半分くらい折れてしまっても、その箇所を縛っておけば生き返ります。



講座4
第4講の1 第4講の2
  この時期の菊は人と同じで、暑さで大変なのです。一日に2回水やりをしなければなりません。 すくすくと大きくなっていきますので、支柱立てを始めます。支柱は、昔は篠竹でしたが、最近は伸縮自由な便利なものがホームセンターあたりで手に入ります。 支柱は菊鉢の縁へ紐で縛ります。菊鉢に3ヶ所穴が空いているのはそのためです・ ほかに穴が空いている鉢はありません。1号というのは、直径3cmですから、 7号鉢で21cmです。菊は、9号くらいがいいですが、大きくすればするだけ 肥料も土の腐葉土も多くなり、また移動時も大変な重さになります。参考1

 支柱を立ててみれば、今年もようやくここまできたかという、満足感と安堵感を感じます。さて、9月の中頃からいよいよつぼみが形成されてきます。 これも3つずつ形成されますが、1つのみ残すために予備を考えながら、先行きにはいずれも欠いてしまいます。 また、3本の支柱には、広がりを調整する目的と、安定感を得るために三角の針金状のもので支柱間を固定します。 次には、支柱にそって生長してきた菊を軽くしばっていきます。 写真を添付しました。



講座5
第5講
 鉢の中に差し込んでいたパイプ管を引き抜いて、肥料を加えた増し土をします。これでまた、根が一回りしっかりと張り、すくすくと生長します。こういう作業をやらない人もいますが、そのときは単純に増し土をしておきましょう。

  9月上旬から開花に向けて菊の花芽が形成されます。 先端に5つくらいの誕生したばかりの花芽をつけます。 しばらく、その状態にしておき、形がしっかりしてきたところで、 残酷ですが、2つだけ残した欠いてしまいます。 大菊はなんといっても先端に一輪の大輪のみが賞賛される菊ですから仕方ありません。 2つつぼみを残しておくのは、万一のためです。 上の写真でお確かめください。



講座6
 尖端に2つ残した蕾も小豆大になったころ、 1つのみにしてしまいます。 この作業を早くやるほど大輪になるといわれています。わき芽 がどんどん出てきますので、見つけ次第取りましょう。菊は、日照時間が短くなると開花の時期がきたことを悟って生長を止めて、花を咲かせる準備にはいります。大したものですね。

 10月下旬ともなると、早咲き系のものは立派な花を付けます。 それに併せて輪台を丁寧につけてやる仕事があります。 このころになると肥料は止めて、水やりだけでいきます。 つぼみが膨らむ頃は、上から見るとみんな黄色に見えます。 今年は、白も赤のもなくした………… と思いがちですが、さにあらずです。 次第に色づきます。 厚もの、厚走りもの、管ものとあって、その中で一つ一つ種類が違うので、名前が付けられています。



講座7
  いよいよ今年の努力が報われる時がきました。開花した大菊は、直径18cm以上になります。この時期の大敵は雨です。ですから、雨よけの菊棚を作りますが、ムリであれば、ビーチパラソルでも十分雨よけになります。

  自分のつくった菊に、それぞれ一等賞、優秀賞などと書いて、楽しむのも一考です。でも、菊づくりの仕上げは近隣の方をお招きして、自分は影からそっと見守っているのが一番です。素人のいろいろな感想を聴きながら…………。立派に開花した大輪を前にすれば、ついやったと満足感に浸れます。台風がこなくて良かったとか、アブラムシに少しやられたが、、といろんなことを振り返りながら大輪を眺め、心も安まる時です。いいですよ。

  勤め人でも、必ずやれます。20鉢くらいあると豪華ですが、最初は5鉢くらいから始められてはいかがでしょうか。参考2

  駆け足でしたので、言い足りなかった点も多々あります。どうぞお気軽にメールしてくだされば、ご質問に答えられると思いますので、お待ちしています。

 最後に、菊づくりは、長い時間がかかります。半年以上の月日をかけて、20日位の開花を楽しみます。菊をつくり始めて9年ほどになりますが、最近では、私が菊をつくっているのではなく、菊に呼びかけられつくらされているんだ…………と、思える心境になることが多々あります。
  本当です。もう少し寝ていたい、と思っても菊がほおっておきません。二日酔いの時、暑い日々、時間に追われている日々、菊はじっと水を待っていますし、わき芽の処理を求めています。
  日々、安易に流れようとする私に、怠けるなすべてをやり残すな お前はそんな根性なしだったのかと私を試しているようです。 私は、菊づくりをしながら、いろいろ自然に学んだ気がします。菊が元気なときは、枝をムリに誘引すればポキット折れてしまいます。3日くらい、干してやれば、つまり、どんな菊も水やりを止めれば自然の法則で、しおれてきて枝は自由に曲げることができます。 菊から学んだことは、いろいろです。

成果
今年の成果(1) 今年の成果(2)
  菊は、ごらんの通りです。 一年の苦労が報われるときです。 昨日は8人、その前は3人の方々に観てもらい、菊も大変うれしそうでした。

                
ありがとうございました。感想メールもお待ちしています。