一部 世界大百科事典参照にて
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日本の国花 日本の場合、法律で定められた国花はありませんが、一般的にキクまたはサクラが日本を表象する花とされて用いられることが多いようです。
キクの漢字 「きく」は漢名の「菊」を音読みしたもの。「菊」の漢字は、散らばった米を1カ所に集めるという意があるとされます。 漢名の「菊」は、終わりといった意味から「究極」「最終」を現わし、 一年の一番終わりに咲くことから名付けられたとされています。
不老長寿の花 中国では、菊は「四君子(竹、梅、菊、蘭)」の一つで、不老長寿の薬効がある言い伝えられています。
重陽の宴 中国では、陰暦の9月9日を重陽といい長寿のお祝いをします。この中国の行事が渡来したもので、邪気を避け、寒さに向かっての無病息災、防寒の意味も込めて、昔から日本では菊花宴とも言って、重陽の節句には菊酒を飲んで、長寿の祈願してきました。菊花を酒に浮かべて味わい、仲間とともに飲み花を鑑賞する「重陽の宴」は菊が霊薬といわれ,延寿の効があると信じられているところからきています。
栽培ギク キクの基本種は,唐時代かまたはその少し前に,中国の中部でチョウセンノギクC.zawadskii var. latilobum Kitam. とシマカンギクC. indicum L. が交雑されてできた雑種であるといわれます。
日本にはいつ

キクが中国から日本に渡ってきたのは奈良時代の初期とされます。平安時代に入ってキクの栽培が復興したと言うのが定説です。 このころは宮廷園芸でごく限られた栽培でした。
鎌倉・室町時代でも、いくつかの美術工芸品や絵画などにキクが描かれているのみで、一般の民衆の間には普及したのは、江戸時代です。キク作りは急速に広まり、特に庶民の間にキク栽培が移ると、栽培や観賞の技術とともに品種改良も急速に発展しました。江戸後期には、菊細工、造り物などといって、今日の菊人形が作られ始めています。

キクの特徴 耐寒性の強い宿根草、伝統的な趣味栽培のほか料理菊として用いられています。食用としたり料理の飾りとしても用いられます。
キクの分類 趣味ギクでは、一般に大菊、中菊、小菊に分け、大菊は花形によって、厚物(あつもの),管物(くだもの)、業(つか)み菊、一文字(いちもんじ)菊、美濃菊などに分けられています。
中菊 中菊とは江戸菊とも言われ、江戸時代から明治時代に東京で流行したキクです。開花後花弁がいろいろな型に変化するので,別名抱(かか)え菊、狂い菊ともいわれます。しかし中輪菊としてこの中菊(江戸菊)のほか、肥後菊、伊勢菊、嵯峨(さが)菊、丁子(ちようじ)菊をまとめる分類もあり、現在では中菊を中輪菊と同義とし、全部の中輪菊の総称とする場合もあリます。
小菊 小菊は文人菊とも言われますが,元来は文人作りという、盆栽的に作るキクに対する名前で、文人菊という品種・系統はありません。
菊の御紋

菊花が皇室の紋章と定められたのは1868年(明治1)1月の太政官布告によって。これによって、一般の国民は菊を紋章に使用できません。菊紋の種類は、百六十種以上もあり、花だけで、あるいは葉だけでできているもの、花と枝と葉からできているもの、他の紋と組み合わせたものなど、バラエティーにとんでいます。ちなみに天皇家の紋は16花弁の八重菊,皇族は14花弁の裏菊です。

菊の花言葉 菊の花言葉は「思慮深い」
小菊は、 「真実、元気」
麦藁菊は、「真実、永遠」
麦藁菊は、「いつも愉快」
スプレー菊は、「私はあなたを愛する」
東雲菊は、「困難に耐える」
吉川英治先生

菊づくり 菊観る人は  陰の人
菊根分け 後は自分の  土で咲け

幸田露伴先生 菊つくり得たならば人の初老かな (菊づくりは、菊の心がわからねばならない。血気にはやる若いうちは手にあまる。初老とは、いま60、当時40)
菊と刀 菊と刀 The Chrysanthemum and the Sword

アメリカの文化人類学者 R. ベネディクトによる日本文化論。1946年刊。日本人の〈義理〉〈恩〉〈恥〉といった観念の解釈をめぐって、戦後日本の思想界に大きな波紋を投じた。
日本人は礼儀正しいといわれる一方、不糖で尊大であるともいわれ,固陋であると同時に新しい事物の順応性が高いともいわれる。また美を愛し菊作りに秘術を尽くす一方では、力を崇拝し武士に最高の栄誉を与える。それは欧米の文化的伝統からすれば矛盾であっても、菊と刀は一枚の絵の二つの部分である。民族の思考と感情から出た習慣と行動には必ず一貫性があるという、ベネディクトの文化統合形態の理論に彼女の直観的な人文学的才能がプラスされ、欧米人による日本文化論として名著との評価が定着した。                          松園 万亀雄氏より
県 花

ノジギクは日本固有の種。1954年に兵庫県の「県花」に指定されています。
多年草。 草丈50〜80cm。
地下茎を延ばして増え、茎の基部は倒れる。 
葉身は5裂または3裂。 長さ3〜5cm、幅3〜4cm。 葉は厚い。 裏面には毛が密生。
葉の基部は水平。 類似種のリュウノウギクは葉の基部がくさび型。
花は筒状花序。 花の直径は3〜3.5cmくらいで、花びら(舌状花)は通常、白色。

食用菊 菊は基本的になんでも食できます。古くから菊は食用として用いられています。「もってのほか 薄紫の菊」「松風 黄色い菊」「阿房宮」など知られています。大菊でも中菊でも、天ぷらや酢の物と
して、花弁も解いて食できる ことはご存じの通りです。